【一花side】
紫音の前で大泣きしたあの日以来、微妙な距離感を保っている。
いつも通り手を繋いで帰っても、交わす言葉は極端に少ない。
ジリジリと太陽が肌を照らすことだけを感じる。
もう夏だもんね……。
夏休みまであと1週間。
高校最後の夏休みのため、教室ではみんな遊ぶ計画で盛り上がってる。
盛り上がれる元気がありません……。
「一花は今年の夏予定アリ?」
「ナシ、かな……」
見ず知らずの御曹司と結婚させられるかもしれません。
………なんて茉夏にも言えないよ。
「茉夏は何か予定あるの?」
「うん。撮影が入ってる。パリまで行くんだよ」
「そっか〜…。じゃあ遊べないね…」
「そうだね。紫音にいっぱい遊んでもらいな」
紫音と予定ゼロですよ…。
隣の席でも口数減ったし。
あたしが正直に話したせいで、絶対に困らせてる……。
別れた方が良いのかな…なんて考えも浮かぶ。
ここまで、本気で別れを考えたことは初めてかもしれない。