なんか全て見透かされてる気分……。
「森野さん。俺、今からすげー最低な事して良い?」
「へっ…?」
「弱ってる森野さんを彼氏から奪っちゃいたい。俺とデートして下さい」
いつになく真面目な瞳で見詰められる。
デートはダメだよ…絶対に。
あたしは紫音のこと裏切りたくない。
「ごめんなさい。デートは出来ないです…」
「じゃあ、俺と遊んで?もちろん、友達としてです」
「いや…でも、他の男の子と2人きりはダメ…」
「お願いします。友達として遊ぶだけ」
悲願される様に言われると、強く断れないのがあたしの悪いトコロ。
駅ビルが多く集まる街中。
結局、あたしの隣には紫音以外の男の子の姿。
「森野さん…いや、一花ちゃんて呼んでも良い?」
「うん‼︎良いですよ」
「俺のことも、名前で呼んで?」
「虎太郎君ねっ」
「そうです」
苦しくなる程、ぎこちない会話。
学生で賑わう街中をただ歩くだけ。
やっぱり………あたしには無理です。

