それは、同一ストーリーの中で主人公を変えるのではなく、同一テーマの中で主人公が異なっているということであった。


つまり、日本映画『セカンド ソート』は、日本人である辻の視点から、日本映画の延長線上にハリウッド映画を描写。


それに対し、アンナ・K の映画『THE PERFECT AMERICAN DREAM』は、その主人公であるリタ・J の視点からアメリカ発祥で、国内部から起こったハリウッド映画として描かれた作品になっていたのだ。


辻の作品とテーマを同じに、リタ・J という別の視点を主人公にしたのが、アンナ・K の映画『THE PERFECT AMERICAN DREAM』で、ちょうど一つの作品を辻ユウヤとリタ・J という二人の主人公の視点で別々の方向から描かれたようなものであった。



数ヵ月遅れ、日本でも封切された彼女のハリウッド映画は、”奇跡の実話を完全映画化?”という歯切れの悪いキャッチコピーで宣伝されていた。


しかし、過去の辻の小説や映画の影響もあってか映画自体は好評で、35億円近い興行収入を記録。


ヨーロッパなどでも順調に客足を伸ばしているらしく、アンナ・K が世界中で売り上げた小説と、映画やDVDなどからの配収を合わせると、最終的にアンナ・K の手元には50億円残ったようだ。


こうして、彼女は、小説のシナリオを実現させた人物として、辻と同様に一躍時の人となる。