また、撮影現場を訪問したいというファンの要望には、サブプロデューサーとして尽力した。


辻のブログやユーチューブにオフィシャル公開された動画は、実際に監督が撮影したものも相当数含まれていたようだ。


このことに関しては、映画制作内外で辛辣な批判と高い賞賛の嵐にされされていたことは、誰の眼からみても明白であった。


編集して実際に使用されるかどうかは別として、劇場公開前に撮影された動画がバトンリレー式に次々と公開される様は、確かに今までの映画のあり方とは一線を画していたように見えた。


グーグルやアマゾンのWeb2.0的ビジネス戦略に、利用者やコンテンツの囲い込みが存在しないように、辻の小説や映画にもそれらが存在しないとされていた。


そこにあるのは、興味や面白さといった”関心”だけなのである。


このように映画製作の常識を覆(くつがえ)す非常識な試みは、未だかつて行われたことは無く、世界的に見ても今回が初めての挑戦者であると歌われていた。



一部の屋内シーンを除き、撮影のほとんどは現地ロケを敢行(かんこう)。


撮影班は日本を飛び出し、タイ、カンボジア、アメリカにまで渡る。


それを可能にしたのは、現時点で100万部の売り上げから発生する9億円の軍資金だった。


映画の製作費は、4億から6億円に増資、残りは、宣伝広告費に回されることとなった。


映画の撮影は、目が回るような綿密な調整を繰り返し、ほぼ順調に進行する。


クランクアップまでには半年を要し、編集を経てようやく劇場公開にこぎつけたのだった。





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