辻は、出版社に小説を売り込む次の行動に出た。



いかに出版社に納得してもらうのか。


僕は、作家にはなれない。普通の小説や旅行記を書いたのでは後が無い。


少なくとも僕の場合、長くは続かない。作家としての実力が無いのだ。


辻は、そのことをよく理解していた。


そこで彼は、新しい方法を小説に取り入れたいと考える。


実際にそう思ったのはもう随分前のことで、海外放浪の中、いろいろな経験を経てたどり着いた結果だった。


彼は、ずっと、その言葉にした途端に端から崩れて形にならない、まるで自己矛盾にも似た方法を小説の中に記そうとしていたのだった。


一方で彼は、今から数億年前の地球に思考を呼び戻す。


燦燦(さんさん)とした天頂に輝く太陽の恵みを受け、花も実らせない原生の地球最初の植物の誕生。


辻は人類が誕生する前に、その現象を認識できる存在としてその植物の前に両ひざをつき見守った。


だがそれは、きっと実る前に生きた絶えたに違いない。


それでも大地のいたる所で生存競争とも言える同じ試みがなされるうち、そのいくつかは確実に実りを迎え、その後の植物の繁栄につながったはずだ。


やがて一輪の鮮やかな花をつける植物が現れ、果実を実らせるように進化したものもいたはずだ。