それからというもの、三人はよく時間を一緒に過した。


昼間は、デパートへ買い物に行き、レストランで食事をし、夜は、ナイトクラブでビリヤード。


ニアンと辻の会話で伝わらないことがあると、マニーが双方の通訳をする。


辻は、独学でクメール語の勉強を始め、二人の助けもありスポンジが水を吸収するように上達していった。



ナイトクラブでのひと時。

「ねぇ、ニアンがいつもマニーのこと『クマウ』って呼ぶけど、それってどういう意味?」とマニーに尋ねる辻。


すると、彼女はおもいっきり膨れっ面で、“黒い”という意味だと。


「リンだけ私のことを『クマウ』って呼ぶのよ。他は、みんなマニーと呼ぶわ」


「何でニアンは、君を『黒い』って呼ぶの?」

「そんなの知らない、リンに訊いてよ」


「なんでマニーを『黒い』って呼ぶの?」と、そばにいるニアンに尋ねる辻。


「黒いから『黒い』って呼ぶのよ」と、噴出しそうな笑いを堪(こら)えながら言う。


マニーは依然、ハリセンボンが怒ったように頬を膨らませビリヤードをしている。


確かにマニーは、他の子より肌が浅黒かった。


はた目にも楽しそうに映る三人の時間は、たまに冗談交じりの喧嘩をしながらも、あっという間に数ヵ月が過ぎていった。





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