「壮介さん、朱里との結婚が決まってすぐに彼女と付き合い出して、挙式予定日の直前に妊娠がわかったって言ったよね?」

「そう。1週間前に別れてくれって。その3日前に妊娠がわかったから式場はキャンセルしたって聞いた。」

確かに壮介はそう言っていた。

「紗耶香が彼と付き合い始めたの…朱里と壮介さんが同棲始めてすぐの頃だよ。」

「そんなに…?私、壮介に別の人がいたって、2年も気付かなかったの…?」

壮介は私と一緒に暮らしていながら、2年もの間、紗耶香とも付き合って、何食わぬ顔をし続けていたんだ。

「それに…妊娠がわかってすぐにあんなにお腹が大きいわけないよ。よく十月十日って言うじゃない?でも実際は妊娠がわかってから出産まで、だいたい8ヶ月くらい。わかる?」

「うん。同じ職場にいた人も、夏に妊娠がわかって、確か春先には出産してた。」

「紗耶香…来月出産だって…。」

私と壮介が別れてから、まだ1ヶ月も経っていない。

道理で私の引っ越しを急かしたはずだ。

「子供が生まれる前に、私を完全に整理したかったんだね、壮介は…。」

「それにね、朱里…。私が紗耶香から結婚したって聞いたの…もう3ヶ月も前だよ。」

「……え?」