季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く

思えば壮介と暮らし始めてから、新しい服はあまり買わなかった。

平日は仕事をして帰ったら食事の支度をして、あっという間に1日が終わった。

休みの日はほとんど家の用事をしていて、二人で出掛ける事もあまりなかった。

たまに出掛けても、近所の大型スーパーとか家電量販店とか、生活に必要な物を買うためだったし、おしゃれをする必要なんてなかった。

それとも私は、おしゃれをする必要もないと思うくらい油断してたのかな。

一緒に暮らしてる事で安心して、壮介はどこにも行かないと高を括っていたのかも知れない。


荷物をまとめ終えると、順平がその少なさに唖然としていた。

「なんだ、オマエの荷物、こんだけかよ?」

「そうみたい。」

「2年も住んでたって割に少なくね?」

「うん、私もそう思ってた。」

「服も地味なのばっかだったし…。あいつ、綺麗なカッコもさせてくんなかったのか?」

私は順平の言葉に首をかしげた。

「どういう意味?」

「別にぃ。女はいい男と付き合うと、どんどんいい女になってくんだよ。好きな男に似合う女になりたいからな。」

確かに順平の言う事には一理あると思う。

私だって順平と付き合っていた時は、若くてカッコいい順平に恥をかかせたくなくて、少しでも綺麗でかわいい女になろうと頑張っていた。