季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く

早苗さんと暮らし始めてしばらくしてから、ファミレスのバイトを辞めて、バーの仕事に復帰した。

俊希くんが劇団の活動が忙しくなり、バイトを辞める事になったからだ。

今は早苗さんと私の二人でバーの仕事をしている。

朝、目が覚めると朝食を作り、早苗さんと二人で朝食を取る。

それからカフェの仕事をして、一度家に帰って洗濯や掃除をしてひと休みする。

夕方になるとまた店に行き、簡単な夕食を作って早苗さんと一緒に食事をしてからバーの仕事をする。

バーの仕事を終えると、早苗さんと一緒に帰宅して、入浴を済ませて一緒に眠る。

ほとんど毎日がそのくりかえしだけど、早苗さんとの暮らしは穏やかで、一緒にいる時はこれでもかというほど甘くて優しい。

バーの定休日は一緒に出掛けたり、部屋でのんびり過ごしたり、時にはベッドで甘い時間を過ごす。

特別な事はなんにもなくても、早苗さんといると幸せ。

早苗さんも、朱里といるとホントに幸せだと言ってくれる。

早苗さんがそう言ってくれる事を、また幸せだと思う。

幸せって、誰かにしてもらうものじゃないんだなと初めて気付いた。

お互いに相手を幸せにしたいと思うから、相手が幸せだと言ってくれると自分も幸せなんだ。

やっと少し、幸せの意味がわかった気がした。