「順平は…私をどうしようと思ってたの?」

順平はしばらく手元を見つめて、ため息をついた。

「陽平がオマエの事、めちゃくちゃ大事にしてたのも、オマエに病気の事を打ち明けたのも知ってる。ホントはただ陽平がオマエの名前を呼びながら死んでいった事だけを伝えたかったんだ。でも…オマエが陽平を捨てて他の男のところに行ったんだって知って…だから余計にオマエを許せなかった。陽平のふりしてオマエを傷付けて捨ててやろうって思ってた。」

「そう…。もっと上手に騙してくれたら良かったんだけどな…。それなら仕方ないって思えたのに…。順平、全然似てないんだもん…。」

手の中の封筒をギュッと握りしめた。

彼は私に何を伝えたかったんだろう?

「これ…順平は読んだの?」

「いや…何度も読もうと思ったんだけどな…。陽平が何を思ってたのか知るのがつらくて、一度も読めなかった。」

「読んでみてもいいかな…。」

「好きにしろ。俺が話せるのはそれだけ。あと…オマエの元婚約者のところにいた女…。」

「知ってる。佐倉代行サービスのサクラなんでしょ?壮介から聞いた。」

「そうか。それならいい。」

順平はソファーから立ち上がり、自分の部屋に戻った。

私はしばらく封筒に書かれた“朱里へ”の文字を見つめていた。

それから、少し震える手で封を開け、便箋を開いた。

少し乱れた順平…いや、陽平の、懐かしい文字が並んでいる。