季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く

早苗さんはその後も私のそばにいてくれた。

順平はどうしたのかと聞かれたけれど、私は何も答えられなかった。

今頃順平がどこで何をしているのか、私にはわからない。

順平が何を考えているのか、私に何を隠しているのかもわからない。

早苗さんは“明日の昼前に迎えに来るよ”と言って、バーの開店時間を少し過ぎた頃に帰っていった。


その晩、病院のベッドで一人考えた。

順平は電話の相手に“俺の子”と言っていた。

相手は既婚者だ。

その人の旦那さんは、その子が順平の子である事を知らないようだった。

どこかで聞いたような話。

順平は旦那さんの事を知っているようだ。


“単純で鈍そうな男だもんな。あんなののどこがいいわけ?”


いつか誰かに似たような事を私も言われたなと思い出す。

いつだったかな。


“どこが良かったんだ、あんな男。”


思い出した。

食事会に向かう電車の中で、順平は私に、なぜ壮介と付き合っていたのかと尋ねた。

その時、順平に言われたんだ。

あれ……?

ちょっと待って。

頭の中で、散らかっていた情報がパズルのピースのように、音を立ててカチカチとはまっていく。

志穂の言葉が、やけに鮮明に脳裏に蘇った。


“ありもしない事、よく本当にあった事のように話せるよね。結局、紗耶香の子は壮介さんの子じゃないって…一体誰の子なんだろ?”