店長と二人で試食をしてみた。

「サラダはこれでいいかも。ソースはちょっと梅の味が強いかな。」

「そうですか?私はちょうどいいかと。」

「個人の好みもあるからな。明日の賄いでこれ作って。みんなにも聞いてみよう。」

「そうですね。わかりました。」

「オーナーにも試食してもらわないとね。朱里ちゃん、事務所に持って行ってくれる?」

「えっ…私がですか?」

さっきあんな事があったばかりなのに、どんな顔をすればいいのかと焦る。

「うん、オーナーお腹空かせて待ってるはずだから。俺はその間に次の試作の準備してるよ。よろしくね。」

「…わかりました。」

イヤとも言えず、仕方なくトレイに乗せた試作ランチを手に事務所に向かった。

事務所のドアの前で深呼吸をして、ドキドキしながらノックした。

「ハイ。」

ドア越しに早苗さんの声が聞こえた。

ゆっくりとドアが開く。

「あ…早速来てくれた。」

「えっ?」

「さっき、待ってるって言っただろ。」

「あ…。」

確かに早苗さんはそう言った。

ちょっと違うんじゃない?と、少しおかしくなって、思わず笑みがこぼれた。

「あの…新作ランチメニューの試作をしたので…。」

「うん、そこに置いてくれる?」

中に入ってテーブルの上にトレイを置いた。

そのまま事務所を出ようとすると、早苗さんに腕を掴まれ引き寄せられる。