季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く

買い物を済ませてカフェに戻ると、店長は新作メニューの試作に必要な食材を並べて、玉ねぎのみじん切りをしていた。

玉ねぎ特有の匂いが、普段より敏感な私の涙腺を刺激して涙を誘う。

じんわりと涙がにじんで、何度か瞬きをした。

「おかえり、遅かったね。」

「すみません、ちょっと…。」

「気になる店でもあった?」

「…そんなとこです。」

買ってきた食材をビニール袋から取り出し、私も早速試作を始める。

私の考案した梅風味の和風ハンバーグソースを作る事にした。

「ハンバーグに梅風味って美味しいのかな?」

「どうでしょう。好みは別れるのかも…。ソースを選べるようにしたらどうですか?ハンバーグに合わなければ、チキンカツとかパスタとかサラダとか…女性はさっぱりした和風の洋食、割と好きだと思います。しそとか柚子なんかも好きですよね。」

「女性客多いから試してみる価値あるね。」

店長がハンバーグのタネを捏ねている間に、私はランチプレートに盛る水菜と大根のサラダを作る。

「サラダは青じそドレッシングとマヨネーズを合わせたものにしましょう。」

「いいね。」

焼けたハンバーグに梅風味ソースをかけ、その横にコロッケ、水菜と大根のサラダを盛る。

「こんな感じかな?」

「肝心の味の方はどうでしょうね。」