季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く

日が暮れて風が冷たくなり始めた。

ライトアップされた観覧車が宵闇の中に佇んでいる。

「あれ、乗ってみようか。」

早苗さんは私の手を引いて、観覧車へと急ぐ。

「朱里、早く!!」

観覧車の前でチケットを買い、ゴンドラに乗り込んだ。

少し走ったので軽く息が上がっている。

「早苗さんったら…そんなに急がなくても、観覧車は逃げませんよ。」

「ごめんね、急かして。」

少しずつ上昇していくゴンドラの窓から、明かりの灯る街並みを眺めた。

「綺麗…。観覧車なんて久しぶりです。早苗さんは観覧車好きなんですか?」

「うん?観覧車が好きって言うか…。昔、好きな女の子と観覧車に乗るのが夢だったんだけどね…。内気だったから、勇気がなくて一度も誘えなかったんだ。」

「ふふ、かわいい。早苗さんにもそんな頃があったんですね。」

「だから今日は…朱里とその夢を叶えようかなーって。」

「私と…?」

早苗さんが私の方を向いた。

その瞳には私が映っている。

「ベタなんだけど…観覧車のてっぺんで、好きな女の子と…キス、したかったんだ。」

「え…。」

心臓がうるさいくらいドキドキと音をたてる。

「朱里…好きだよ。」

「……!」

早苗さんは私の肩を抱いて、ゆっくりと顔を近付けた。

私は思わずギュッと目を閉じた。