季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く

その疑わしげな視線に耐えかねて、私は思わず立ち止まり順平を軽くにらんだ。

「何よ。」

順平は意味ありげにニヤニヤ笑っている。

「別に?どうせならマスターの部屋に泊まってモーニングコーヒー飲んで来れば良かったのになーって思っただけ。」

その言葉は、さっきまでマスターに抱きしめられていた私にとって、妙に生々しい。

あろうことか、マスターと裸で抱き合った翌朝を想像してしまったじゃないか。

「…バカ言わないで。」

頭の中が順平に見えるわけでもないのに、ばれないように思わず目をそらすと、順平はまたニヤッと笑った。

「なんで?いい人そうに見えても男なんてロクなもんじゃねぇぞ?下心のまったくないやつなんて絶対いねぇんだからな。」

「それアンタの事でしょ?」

順平は、呆れて部屋に行こうとした私の腰を引き寄せ顔を近付けた。

「それわかってて俺と暮らしてんの?オマエもなかなかエロいね。もしかして誘ってる?」

カッとなった私は、順平のお腹に思いきり肘鉄を食らわした。

順平は痛そうにお腹を手で押さえ顔を歪めた。

「んなわけないでしょ、バカ!!最低!」

「こいつ…襲ってやる!!」