私は言葉を失った。





「ゼロの母親はあいつを産む時に亡くなったんだけど、先代の国王は国を追放される時に、生まれたばかりのゼロも一緒に連れて行ったんだ。」





ジンの話では



その時国は荒れていて、人間と国王の間に生まれたゼロを、殺そうと、国の魔法使いがゼロを追ったそうだけど




先代の国王が自らを犠牲にしてゼロを守って、



あの森の奥にあるグランさんの家に
国の魔法使いに気づかれないようにゼロを預けたらしい。





「グランさんの家に来た時、先代の国王は全身血だらけで、魔力もほとんど残ってなかったそうだよ。


……そりゃあ、上級魔法使いを何人も一人で相手してたら、持たないだろうね…。」







ジンは悲しそうにカーペットの上の映像を眺める。





「グランさんにゼロを預けた後、国王は、ゼロの母親が亡くなった、城の離れの中で死んでいるのが見つかったらしい。」






私は絶句したまま、映像に映るゼロを見つめる。








“そんな風に誰かの為に生きれたら、俺も幸せなのかな…”








ふいに、出会ったばかりのときにゼロが言っていた言葉を思い出す。





今なら、あの言葉の意味がわかる。





ゼロにこんな過去があったなんて…。