そこから少し歩くと目の前に小さな青い建物が見えてきた。




「今日はここに泊まって明日出発するか。」



ゼロはそう言うと、入り口の扉を開けた。




扉を開けると、フロントには少し太った女性が座っている。




「あら、可愛らしいお客さんね!マリーの宿屋へようこそ。」




マリーという名らしき女性は、私とゼロの顔を交互に見る。





「お姉さんと同じ部屋でも大丈夫よね。
お金は一部屋分でいいわ!」




お姉さん?



隣で小さな少年の機嫌が少し悪くなったのを私は感じ取った。





そんなこともおかまいなしに、マリーは私に鍵を渡して、部屋へと案内する。





「じゃあ、自由に使ってね。ごゆっくり!」





パタン、と部屋のドアが閉まると、ゼロが不機嫌そうに口を開いた。







「俺は弟じゃねぇって。」






それを聞いて私はふっ、と顔が緩む。





「いいじゃない。あの人も悪気があったわけじゃないわ。」




この部屋もなかなか綺麗だし、と続ける。




部屋には大きな窓があり、夜景が見える。


そしてその隣にはベットが二つ並んでいた。






久しぶりのベットだ。




今までは野宿だったため、このふかふかの感触が懐かしい。





私がベットに腰掛けると、ゼロがじっ、とこちらを見つめた。






「まだ気にしてるの?いいじゃない。
部屋代も少なくて済んだんだし。」





私の言葉にゼロは表情を変えず答える。





「フィオネは俺と同じ部屋でいいのかよ。」