「あれは、五年前のことだった…。


俺は、都市の近くにある小さな農村で育ち、両親を亡くしてからはずっと弟との二人暮らしをしていたんだ。」





ルナータは、表情を変えないで語っていく。





「ある冬の日。弟が魔獣に襲われて、見たこともない症状がでる病気にかかってしまったんだ。


それは、魔法の実力に自信を持っていた
俺でさえ、治せないレベルのものだった。」





魔獣に襲われて、厄介な病気になってしまうことがあるんだ…。



私は、ルナータの話を黙って聞いている。




「その病は、上級の治癒魔法を使えるものならば、治せるかもしれない、と聞いた。

だから俺は都市や、他の町に出向いて、片っ端から治癒魔法を使えるやつに頼み込んで回ったんだ。」





ルナータは、小さく息を吐くと、うつむき、「だが……。」と続けた。





「大金もなく、特に高価な家具なども持っていなかった俺の話なんて、誰も聞いてなんかくれなかった。


それどころか、弟の病がうつるのを恐れて奴らは、俺にさえ近づこうとしなかったんだ。」





ルナータの瞳は、憎しみを宿したままでいるが、どこか悲しさを隠している気がした。




彼は、静かにその続きを語る。