私は、はっ、と目を見開く。




ゼロは、いつも通りだった。




何を考えているのか悟らせない顔で、
すたすたと歩いてきて、私の手を取る。






「フィオネ………行くぞ。」






まるで、それが当たり前かのように。





でも、それは今までとは少し違った。




いつもは手なんて握らないのに。






ゼロの中で……私は役目は
“容れ物”以外の何かがあるの?





ゼロは、私の心の中を察しようとはしなかった。




普段のゼロなら人の心の動きにとても敏感なのに


……私の気持ちはいつもゼロには届かない。





いつも、ゼロは私の迷いなんか飛び越えて、私の心の奥まで入ってくるんだ。







………だから、私は




この人の隣にいたいって…


思ってしまうんだ。







ゼロは、ぱっ、と手を離すと
私の隣に並んで、ゆっくり歩き出した。




私もゼロに続いて歩く。