私は、ゼロを悲しみの中には置いておきたくなかった。
これは、同情という気持ちではなく、私自身がやりきれないような気持ちになるからだ。
それは、私がゼロの相棒だから感じることなのだろうか。
この気持ちがなんなのか、私にはわからなかった。
つい最近、ひょっこりと現れたこの感情に、自分自身が少し動揺していることに気づく。
あの夜からだ。
星の町の宿屋で、青年の姿に戻ったゼロを正面から見た瞬間から。
“俺は相棒には特別な感情は持たないから。”
ゼロの声が頭の中にこだまする。
あの言葉を聞いた時から、私の中にこの気持ちが生まれたんだ。
私はゼロの相棒だから、彼の幸せを願うのは当然のことで。
私の幸せの為に、“ゼロにそばにいて欲しい”なんてことは考えなかった。
だからと言って、彼が
他にいい相棒を見つけたから別れよう、
と言ってきたら。
私は素直に受け入れることができるだろうか。
私は勝手についてきたようなものだ、という自覚はあるが
ゼロはゼロで、“相棒はフィオネしかいない”と言ってくれた。
私は、その言葉が想像していた以上に
聞けて嬉しかったんだ。
「ゼロ…私を連れてきてくれて、ありがとう。」
私は、彼の寝顔にそっと囁いた。
月明かりが、優しく私たちを照らしていた。