家に足を踏み入れると、そこはふたりらしさを感じさせるものでいっぱいだった。
2LDKの間取り。
整理して置かれているリモコンや雑誌とか、毎日使ってるんだろうなって思わせるようなキッチンの様子だとか。
コルクボードには、まだ幼い双子の写真が貼ってあったり。
こいつららしい、あたたかい空間が広がっていた。
「そういえば、イチはまだ写真でしか見たことないんだったよね」
壁に飾ってあるこいつらの子供の写真をじっと眺めていると、マグカップを持った葉月に後ろからそう声をかけられる。
それに無言で頷くと、甘い匂いをたてるカップふたつをテーブルに置いた後、「でも、会わせてあげられるのは明日かなあ」と、しみじみした声で葉月は淡い笑顔で笑った。
「今年は帰って来られてよかったよね。きっとミヅキも喜ぶよ」
テーブルにつき、カレンダーを見ながら葉月は言う。
明日3月5日は、美月の命日だ。
東京で仕事に就いてからは、なかなかこの日に帰ってくることができずにいて、今年は何年振りかでこっちに戻ってくることができた。



