「奏汰、ただいま~……」
「お邪魔します」
7分くらい歩いて着いたのは、綺麗なマンション。
数年前に建てられたばかりらしい。
葉月が慎重にドアを開けて小さく声をかけると、奥の方から忍び足で奏汰が歩いてくる。
その顔は心なしか疲れているように見えた。
「おかえり。イチも、久しぶり。……で、来たところ悪いんだけど、チビたちさっきやっと寝ついたからさ……」
ぼさぼさの頭を掻いて、同じように小さな声で奏汰は言う。
……疲れてるってのは、気のせいじゃないらしい。
「あいつら、ほんと些細な物音でも起きるんだもんなあ。勘弁してくれよ本当に……。まあいいや、とりあえず上がりなよ。外寒かっただろ?」
甘いココア用意しといたよ、と悪戯っ子のように笑う奏汰。
葉月もクスクス笑ってて、変わってない自分の味覚が少しだけ恥ずかしかった。



