「久しぶりだね、イチ」


 言葉通り、本当に“久しぶり”だった。


 こうして言葉を交わすのも、隣に立つのも。


 ふたりでいる時間も。


「……久しぶり、葉月」


 数年前までは、こいつに対してこんなふうに思える日は来ないと思っていたのに、案外その言葉がさらっと自分の口から紡がれる。


 そして、『前は当たり前だったこと』が『当たり前じゃなくなること』。


 それが、俺の中で“普通のこと”に変わってて、“久しぶり”ってこいつに対して思えることが、なぜだか新鮮だ。


 見た目も中身も葉月のまま。


 あの時好きだった、葉月のまま。


 けれど、2年という月日が流れ、以前より落ち着いた雰囲気で優しげに微笑む彼女は、別人のようにも見える気がする。


 なにも変わってなんかいないけど、そう思うのは俺が変わったからなのか、それとも本当に見えない部分で彼女が変わったからなのか。


 柄にもなく、そんなことを思う。