「だから、今のわたしは『あの時、もしもこうだったら』なんて、考えられないんだ」
「そうか」
葉月は“ごめん”とも“ありがとう”とも言わずに、過去の俺の想いへ終止符を打ってくれた。
とっくにそれは打たれていたはずだけど、改めてちゃんと答えを貰えたのは、ただただ嬉しかった。
奏汰はきっと、“もしも”をたくさん考えて不安だったんだろう。
葉月のその答えにひどく安心したみたいで、赤い顔した奏汰はそのまま眠ってしまった。
あの日から時間が経つのが遅く感じて、それでも同じように時間は流れていくから、こうして別々の時間を過ごす日が続く中で、当たり前のように隣にいられる時間があることに、不思議な心地よさを感じる。
いくら幼なじみって言ったって、こうして約束しなければもう会えないし、今まで約束もなしに会えてたのが奇跡って言えるくらいだけど。
ふと、窓辺に寄って空を見上げる。
また、積もりそうだ。



