その時カタっと小さな音がして、奏汰と一緒にその方向を見ると、気まずそうな顔をした葉月が肩を縮こまらせて立っていた。
「……聞いてた?」
「……聞こえちゃったよ、ばか」
初々しいカップルみたいな会話をして、気まずそうな表情で俺に視線を送るふたり。
馬鹿だなあと思った。
それと同時に、やっぱりこいつらのこういう顔が見れて、心底嬉しい自分がいることに気が付く。
「葉月も座れば」
なんて、おどおどしているふたりと違い余裕な俺は葉月にそう促して、さっきと同じ俺の目の前に座らせる。
髪、伸びたな。
色は、あの時と同じなんだな。
俯いてしきりに髪をいじる葉月を見ながら、過去の想いを口にする。
「好きだった」
俺の思い出の中には、気付けばいつも葉月がいた。
ずっと、ずっと。
俺の言葉に顔を上げた葉月、その隣で気まずそうな顔をしている奏汰。
正直おもしろいな、と思う。



