あたたかい冬の日に雨降り


 その時カタっと小さな音がして、奏汰と一緒にその方向を見ると、気まずそうな顔をした葉月が肩を縮こまらせて立っていた。


「……聞いてた?」


「……聞こえちゃったよ、ばか」


 初々しいカップルみたいな会話をして、気まずそうな表情で俺に視線を送るふたり。


 馬鹿だなあと思った。


 それと同時に、やっぱりこいつらのこういう顔が見れて、心底嬉しい自分がいることに気が付く。


「葉月も座れば」


 なんて、おどおどしているふたりと違い余裕な俺は葉月にそう促して、さっきと同じ俺の目の前に座らせる。


 髪、伸びたな。


 色は、あの時と同じなんだな。


 俯いてしきりに髪をいじる葉月を見ながら、過去の想いを口にする。


「好きだった」


 俺の思い出の中には、気付けばいつも葉月がいた。


 ずっと、ずっと。


 俺の言葉に顔を上げた葉月、その隣で気まずそうな顔をしている奏汰。


 正直おもしろいな、と思う。