数分後リビングに瑛斗が入って来た。

顔を上げると瑛斗は向日葵に笑顔向けた。

「心配する事じゃないみたい。アキも俺と一緒だったって。俺に彼女が出来たって言ったら、自分にも居るからって。今までのことはお互いの秘密にしましょって言われた。なんか、あっさりしてた。」

「そうですか。よかった。」

向日葵は密かに自分の存在を【彼女】と言われた事に幸せを感じた。

「寝なくていいんですか?」

「うん、ちょっと目覚めたかな。そういや、向日葵も寝てない?」

「なんで?」

「目の下クマがあるから…。ごめん。俺のせいだよな。」

「大丈夫です。心配しないでください。」

「うん。それより、向日葵?」

「はい。」

「寝室一個にしない?」

「なっ!!!」

「だって俺ら恋人でしょ!?同じ屋根の下に住んでて、寝るの別々って変じゃん!?」

「変なことは一切ありません!」

「なんで〜いいじゃ〜ん?!」

「駄々捏ねないで下さい!あっ朝ご飯どうしますか?もう寝ますか?」

「一緒になら寝る。」

「もうっ!いい加減にしてくださいっ!」

「あっいい事思いついたっ!」

そう言って瑛斗は携帯を取り出すと、何処かに電話を掛けた。

「あっ杉本さん?俺だけど…記者会見するのってナシなの?」

「だから、それは事務所からNGだって言ったろ?!」

「アキとの事じゃなくて…俺、結婚したい女性が居るんだ。もう一緒に住んでる。」

「は?お前なぁ!!」

「ごめん…黙ってて…。」

結婚?今結婚したい女性って言った??

向日葵は一人パニックになっていた。

「とにかく今は駄目な事ぐらい、お前にもわかるだろ?」

「そうだけど…!」

「お前の事だから、その女性の事を安心させたいとかそんな所だろうけど、周りはどうなる?お前にはファンがいるんだぞ!そのファンの気持ちは考えたか?」

「それは…。」

「ほら、みろ。ちょっと頭冷やせ!それこんな報道で駄目になるなら、その女性も、それまでの女性だぞ。」

「それは…ないよ。」

「じゃ、時期を見てもう一度考えるから。お前はゆっくり羽でも伸ばせ!いいな?わかったな?」

「うん。でも俺本気なんだ。」

「わかってる。お前をこの世界に引っ張り入れたのは俺だ。俺はお前の性格をちゃんとわかってる。でも、今は我慢してくれとしか言えない。すまん。」

「わかった…じゃ。」

電話を切る瑛斗の背中が辛そうに見えた。

向日葵はその背中に寄り添った。

「向日葵…今は大人しくしろって言われちゃった。」

「結婚したい女性って、私ですか?」

瑛斗は向日葵に正面で向き直った。

「今すぐは無理でもいつか向日葵とって思ってる。」

「家族になるんですか?」

「うん。俺じゃ嫌?」

「嫌じゃないです。嬉しい。」

二人は二度目のキスをした。

初めてのキスより長いキス。

「向日葵…俺の部屋に行こう。」

瑛斗は向日葵を抱き締め耳元で囁いた。

それって…そうゆうことだよね?!

待って!昨日お風呂入ってない!

それに下着もダサい!!

だって上下別々のだし…いや、そうじゃなくて、展開早いっ!

無理!絶対無理っ!

「瑛斗さん、それはちょっと心の準備ができてないと言うかなんというか…。」

「ごめん。もう限界…。」

「えっ?」

「俺、寝るね。おやすみ。」

呆然と立ち尽くしてる向日葵を置いて、瑛斗は寝室に消えて行った。

「なんだ…寝たかっただけなんだ。」

向日葵は自分の言動の恥ずかしさに軽く目眩がした。

「私も寝よう…。」

向日葵は部屋に入ると、すぐに眠りに就いた。