別のところに住むとなると、保護観察所の許可を受けなきゃいけないんだっけ。
のばらの家は部屋が余っているというけど、
迷惑をかけっぱなしになるから、早めにお金を貯めて一人立ちしたい。
18になったらのばらとまた2人で暮らしたいし。
でも、高校も卒業したいから、通信制か定時制で行けるとこを探そうかな。
まあ、細かいことは後ででいいか。
今は、彼女と一緒にゆっくりと時間を過ごしていたい。
「そうだ。あのマンションの部屋、売られることなったんでしょ?」
隣にいる彼女は楽しそうに、色々な話をしてくる。
「うん。母さんから聞いた」
「私、あのマンション名、気に入ってたんだけどなぁ」
「そう? おれは嫌だったよ。自分の名前入ってるし」
――ストロベリーフィールド。
これが、僕らが過ごしたマンションの名前。
僕が生まれた頃くらいに、その時母と付き合っていた男が買ってくれたものらしい。
「ねーねー、ストロベリーフィールドってどういう意味か、一吾くん知ってる?」
「イチゴ畑でしょ?」
当たり前のように僕は答えたけど、彼女はこう言った。
「孤児院」
僕は、「は?」と眉間にしわを寄せながら彼女を見た。
あ、そういえば。
ゆーたさんがくれたオススメCDに、ビートルズが入っていたな。
その中にストロベリーフィールドって名前の孤児院をモチーフにした曲があったっけ。
「ぷっ、それは意味じゃないでしょ」
思わず僕は吹き出してしまったが。
「悪くないとこだったのにねー。ま、もう二度と行くことはないけど」
そう言って、彼女は僕をじっと見つめてきた。
キスでもしたいのかなと思ったけど、違う。
それは、僕の心の奥を知りたがっているような視線だった。
「ばーか」
舌打ちをしてから、彼女の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
せっかく髪セットしてきたのにー、と口を尖らせる彼女に僕はこう伝えてやった。
「もうおれはクソガキじゃねーよ。ついでにマザコンでもねーから」
☆おわり☆

