愛よりも遠い距離




そう、これはワガママではない。



彼の為に……私は去るのだ。



日課になった、ラインストーンでキラキラと飾られたピルケースを開けて、その中身をミネラルウォーターでごくりと飲み干す。



大人になって、地元を離れてから、もう何錠この薬を口にしてきただろう?



それは彼といる為だけではなく、私が私でいる為に。



「どこか具合でも悪いのか?」



隠れて飲んでしまおうとする度に、敏感なアキは必ず気がついてそう聞く。



だから私もアキを心配させないように、アキに秘密がバレてしまわないように、何でもないふりで答えてた。



「仕事で、ね。ストレスが溜まるから胃薬が手放せなくって」