冷たい舌

「知ってるの?」

「なんかしつこい女だろ? 忠尚、あんまり女は家には呼ばないんだけどな。

 二度くらい押しかけてきたことがある。あんまりいい感じはしないがな」

 その言葉に安堵する自分が居た。

「なんでああいうのと付き合うかな。ほんと、わかんねえよ、あいつの考えてることは」

 そこまで言って、和尚は言葉を切った。

 透子? と不思議そうにこちらを見る。

 自分は今、どんな顔をしているのだろう。

 浅ましい想いを隠そうとでもするように透子は頬に手をやった。

 和尚が、その手を掴む。

 ぴくりと勝手に腕が震えた。

『貴女は和尚くんを好きなんじゃないですか?』

 春日の言葉がふいに耳に甦った。

「……透子、お前」

 視線が一瞬、正面から絡んだ。

 そのとき、龍の咆哮にも似た激しいクラクションとともに、真っ黄色のRX-8が突っ込んできた。

 慌てて透子は和尚から離れようとしたが、和尚は透子をその背に庇う。

 タイヤの軋む音と、砂の上を滑る音。

 車は和尚の足先、僅か数センチで止まった。