冷たい舌

 春日がその変化を理解したことに気づいたのだろう。

 女の子の行事の区切りと言えば、初潮しかない。

 いえ、別に、と言いながら、透子があまりに慌てふためくので、その様がおかしくて、ハンドルに縋るようにして笑い出してしまった。

「もうっ。春日さんっ、ひどいっ」

 だが、春日はハンドルから顔を上げて言った。

「なんですか? 僕何も言ってないじゃないですか」

「でも……ああ、そうか」

 はっきり口に出さいなので、否定のしようもないらしい。

 落ち着きなくこの場を纏めようと窺う姿が、敵を捜すミーアキャットが首をひょこひょこ伸ばす姿に似ていて、堪え切れなくなった春日はまた吹き出していた。

「もうっ! なにがおかしいんですかっ」
と透子は半泣きになっている。

「いや、別に。でも透子さん、意外と遅いんですね」

 笑い過ぎたせいで、零れそうになった涙を拭うべくやった指の隙間から見、意地悪く囁く。

「春日さんったらっ!」

 赤くなった透子は、春日の腕をはたいた。

 それは、微妙に残っていた気まずさを吹き飛ばすのに、ちょうどいい具合だった。