あれが恋でなくて、なんだというのか。
俯く透子を見ながら、春日は思い出していた。
和尚を見つめる透子の目。
だが、透子は今もそれを否定する。
「本当に違うんです。
和尚は私にとって、その― 神様、みたいな人だから」
しかし、春日はその答えの方に驚いた。
龍神の巫女たる透子が、神に等しいということの方が、ただ好きだというより深いことだとわかるから。
「そんなに、凄い人なんですか」
半ば、呆れも混じって問うと、そうじゃないんですよ、と透子は手を振った。
「だって、頭はいいけど、人の意見は聞かないわ、頑固だわ、依怙地だわ、偏屈だわ」
「あの、神様みたいな人なんじゃなかったんですか?」
だからですよ、と透子は眉をひそめた。
「民俗学やってらっしゃったんなら、ご存じでしょ?
神様って傲慢で我儘で、人の言うことなんて聞かないじゃないですか。
ほら、民話なんかだと、女神様が水浴びしてるのをうっかり山に踏み込んで見てしまったせいで、何処までも追いかけられて殺されたりする。
見る気もなかったのにですよ?
ああいう理不尽さがそっくりなんです!」
憤ったように透子は言うが、その言葉には深い愛情が感じられた。



