冷たい舌

 でも、透子さん、と彼は正面から透子を見つめる。

 何もかも見据えて越えてきた穏やかなその瞳に、不思議に癒されるのを感じた。

「それでも僕は後悔してないんですよ。

 どんな結果に終わっても、人としての禁忌を破っても、僕は彼女を愛してよかったと思ってる」

 さっきまで造りもののようだった春日の笑みが、その瞬間、夕暮れの空気に溶けてしまいそうなものに変わった。

 人が人を愛するということは、こんなにも周りの人間をも幸せにするものなのかと思った。

「恥じ入るつもりはないんですよ、誰にも。

 訊かれたら、否定するつもりもない。

 でも― あなたの前に出るとちょっと」

「え?」

 春日は、はにかむように笑って言った。

「あなたみたいに純粋な人の前だと、さすがにちょっと恥ずかしいですね」

 特に、なんて言い訳しても、十四で手を出してしまったというのが、と春日は頭を掻く。

「いえ。そんなことない……そんなことないです」

 それは透子の心からの言葉だった。

 顔を上げ、春日を見据える。