冷たい舌

 春日はそこで笑った。

「よく考えたら、変ですよね、僕。
 なんで貴女にこんな話してるんだろ」

 いいえ、と透子は言った。

「……聞きたいです」

 そして、聞いてあげたい。

 それで、この人が楽になれるのなら。
 そう本気で思っていた。

 出会ってまだ間もないけれど、いつも何処か人に気を使うような空気を纏ったこの人が、誰かにそれを告白することで、少しでも楽になれるなら。


「彼女は僕に言いました。
 『貴方と私は姉弟なのよ』と。

 僕は答えた。

 『それがどうした』って―

 ねえ、透子さん。
 それから、どうしたと思います?」

 春日は透子を振り返り、儚げに笑う。

「姉も僕を愛してくれてたんです。
 それだけわかれば充分だった。

 世間の目なんか僕には関係なかった。

 姉さえ居てくれれば、それでよかった。

 親を気にする姉を説き伏せて、僕らは結ばれた―

 十四でですよ。
 笑っちゃうでしょう?」

 透子は、きゅっ、と座席を握りしめた。