冷たい舌

 春日はそんな透子に気づいたように笑う。

「そうですよ、僕が好きなのは、僕の、姉なんです」

 軽蔑しますか? と春日は笑った。達観したような笑みだった。

 いえ、と透子は即答する。

 春日は椅子に深く腰をかけなおす。

 彼の目は、目の前の小道を。

 いや、透子には見えない何処か遠くを見ているように見えた。

「まあ、姉とは言ってもね。

 向こうは子供のない親戚に引き取られていたんで、実際には従姉のようなものでした。

 今の透子さんと和尚くんたちより、遠い関係だったかもしれないですね」

 春日は、何かをいとおしむように語っていた。

「僕は彼女が自分の双子の姉だと知っていた。
 周りが隠しててもね、覚えてたんですよ。

 二歳くらいの記憶って結構あるでしょう?

 でも、僕は知らない振りを続けていた。

 そうすれば、彼女に恋をしても構わないはずだったから。

 中学三年の夏、僕は彼女に告白した。

 だけど―
 彼女もやはり、僕と一緒に育ったこと、覚えていたんです」