冷たい舌

 



 春日の車は、国道を離れた公園側の道に、歩道に乗り上げる形で止まっていた。

 エンジンは止まっていたが、開けられた窓からの風が、夏の夕暮れにしては涼しかった。

 透子さん、と春日に呼びかけられる。

「僕ね、子供の頃からずっと好きな人がいたんですよ。
 もう、この人しかいないっていうくらい。

 後先も、周りの誰のことも、彼女のことさえ、そのときの僕には見えてなかった」

 きっとね、と春日は苦笑いした。

「僕があんなことさえしなければ、彼女はたとえ、僕のことを好きだったとしても、思い止まったと思います。賢い人だから」

 春日は試すように透子を見ていた。

「誰だと思います……? 相手の女」

 透子の胸には、もう確信があった。

 この春日が、それほどまでに罪の意識に苛まされる相手。

 だけど、それを自分の口から出すべきではないと思った。