冷たい舌

 



「爺(じじい)」

 なんじゃい、と振り返ると、法要の帰りなのか、袈裟をかけた和尚が立っていた。

 境内を見渡しながら言う。

「透子はどうした」

「なんじゃ、お前、知らんかったのか。
 春日と出かけたぞ」

 和尚は眉根を寄せたあと、間をおいて訊き返す。

「―なんだって?」

 公人はわざと大きな声で繰り返した。

「『春日と出かけた』と言ったんじゃ。
 お前、ほんっとーに肝心なところで間抜けよのう」

 間抜け呼ばわりされた和尚は、むっとする。

「お前がはっきりせんから悪いんじゃないのか?」

「俺が何をどうはっきりするっていうんだ」

 可愛くないのう、と公人は孫娘に向けたのと同じ言葉を呟く。

 どっこいしょ、と足許にあったダンボールを抱えた。

 無視して行こうとすると、和尚は追いすがるようにして付いてくる。

「おい、だいたいなあ。
 俺がどうとかいう問題じゃないぞ。

 透子が俺を拒絶してるんだ」

「透子は龍神様の巫女じゃからの」
「だから……!」

 和尚は言いかけて、言葉を止めた。

 公人は足を止め、振り返る。