冷たい舌

 あんなにストレートに感情を表すことなんて、自分にはないことだから、なんだか彼が可愛らしく感じられていた。

 そんなことを言うと、きっと本人は怒るのだろうが。

「おねえさんって、海外にいらっしゃるんですよね?」

 その話題に、春日は和やかな気分に水をさされたように感じた。

 姉のことを振られて、そんな風に感じたのは初めてのことだった。

 早くその話題から離れようとして、つい、どもってしまう。

「そ、そうなんですよ。
 だから、これ、送ってやらないと」

「あんまり日本には、帰って来られないんですか?」

「忙しいですからね、あの人も。いろいろと―」

 透子は、うふふ、とあどけない笑みを見せる。

「仲いいんですね。
 うちの龍也なんて、もうすっかり私のこと馬鹿にして、呼び捨てにするし。

 もう何年も、『おねえちゃん』なんて聞いたことないですよ」

「……それは危険な兆候です」

 そうですか? と透子は春日の方に向き直る。