日も落ちかけた頃、二人は帰路についていた。
助手席の透子は、さっき買った猫の土鈴を包みのまま転がして、りんろんりんろん音をさせて喜んでいる。
小物に興味を示すとは、やっぱり女の子なんだなあ、と思う。
初めて逢ったとき、あの車にも驚いたが、ドリフトでピタリと駐車スペースに入れてきたあの技術にも感嘆した。
カウンタックは構造上、運転席から後ろが見えにくいので、慣れない場所でバックするときはドアを開け、身を乗り出して下がらなければならな
い。
その面倒臭さもあって、バックで出し入れするのを嫌ったのかもしれないが。
それにしても……あれは女の運転じゃなかった。
だが今、その透子は、やはりご機嫌なまま、鈴を転がしていて、春日は思わず笑みを溢した。
なんですか、と切れ長の眼の奥の、愛らしい黒い瞳が自分を見る。
「いいえ―」
透子と会ってから、ずっと笑っている気がする。それは、彼女の何処かコミカルな仕草のせいかもしれない。
そしてそれは、あの龍造寺の三人や透子の母にも共通するものでもあった。
ああいう動きが出来るのは、何の裏もない人間だからだ。
自分に喧嘩を売ってくる忠尚でさえ、なんだか憎めないものがある。
まあ、彼の場合、透子恋しさに突っ掛かってきているのが見え見えなのもあるが。



