冷たい舌

「それに、忠尚にも腹が立つんですよ。

 あの女の子、よく恋愛成就の御守り買いに来るんですけど、それって不安だからでしょう?

 まあ、あれだけ相手が複数いりゃ、不安にもなるでしょうけど。

 忠尚、隠さないから―

 ああいうとこ、ずるいんですよね。最初から、他にも女の人がいること言っておくんですよ。

 そしたら、相手が文句言ってきても、それを承知で付き合ったんだろって言えるから」

「なんか……羨ましいような人生ですね」

 つい遠い目をしてしまった春日は、透子が冷たい目線で自分を見下ろしているのに気がついた。

「あっ。
 もちろん、一般論ですよ、一般論」

 透子はちょっと眉をひそめてはいたが、忠尚のお陰か、男のそういう面には耐性があるらしく、
「あ、この上なんですよ」
と、すぐにいつもの口調に戻って、上の階を指さした。

「最初、忠尚に教えてもらったんですけどねっ」
と忌ま忌ましげに言う。

 どうせ、デートにでも使っていたのだろう。

「でもまあ、忠尚くんが、ああなっちゃうのも、わかる気はしますけどね。

 あれだけ奇麗な顔してると、ちょっと悪さしてみようかなって気になるかもしれないです」

「でも、同じ顔でも和尚はしませんよ」

 その言葉に、和尚への絶対的な信頼を感じて、ちょっと意地悪したくなる。