冷たい舌

 透子と居ると心地よかった。

 その独特の空気も、常に小さな笑いを誘うしゃべり方も。

 それに、彼女を連れて歩くと、ちょっとした優越感にも浸れる。

 八坂より遥かに大きなこの街でも、透子が歩けば、大抵の人間が振り返る。

 そのスタイルと美貌もだが、彼女には現代人が失った不思議な洗練された空気があった。

 気分よく歩いていたが、目標のデパートまで後数メートルというところで、透子がいきなり手を振った。

 さっきまで居た向こう側の道路を見ている。

「忠尚!」
 その呼びかけに、春日は強張った。

 あの透子べったりの幼なじみに、こんな場面を見られたら、何を言われるやらと思ったのだ。

 だが、透子はすぐに手を下げ、やば、と舌を出した。

「どうしました?」

「女の子と一緒だったみたい。
 忠尚じゃなくて女の子の方と目が合っちゃったみたい。

 行きましょう、春日さん」

 慌てて透子は腕を引く。