冷たい舌

 内心、どうしたら透子が、その手を放さないでいてくれるかと思案して、適当に言った。

「いや、だってほら。透子さん、あぶなっかしいから」

 だが、透子はその言葉に過剰に反応する。

「やっ、やっぱり。
 そうですかっ?」

「え? やっぱりって?」

 透子は頬に手を当て、床を見ながら言った。

「私、歩き方、変だって言われるんです。
 走り方もおかしいって―

 でも、あれって、走ってる途中で、右足出すのか左足出すのかわからなくなるからなんですけどっ」

 渾身の力を込めて言う透子は、
「そういうことって、よくありますよね?」
と春日を見上げる。

「……(まず)ないですね」
 同意を懇願する透子の視線を浴びながらも、即答してしまった。