冷たい舌

「ほんとうなんですよっ?」
「まっ、まだ、何も言ってないじゃないですか」

 その捨てられたハムスターのような目に、、つい、どきりと身を引いた。

 だが、透子はそんな動揺には気づかずに、腕を掴んでくる。

「決めたっ。
 絶対逃がしませんからね。

 一度、飲んだらわかりますって」

「はいはい、お供しますよ」

 なんとか笑って言った言葉に安心したのか、透子は手を放そうとした。

 残念に思いかけたとき、げらげらと笑いながら歩いてきたおばさんの集団に背中からぶつかられ、軽い透子は弾き飛ばされていった。

「すっ、すみませんっ」
と彼女は振り返って謝っていたが、地にどっしりと根を生やしたようなおばさんは、ぶつかったことにさえ気づかなかったのか、そのまま行ってしまう。

 運良く透子を抱きとめた春日は、
「ああ、危ないですよ、透子さん。
 手、放さない方がいいかも」
と程よい展開に、ほくそ笑む。

 透子は申し訳なさそうに、でも、と言った。