冷たい舌

 




 平日だと言うのに、バーゲンの時期なせいか、デパートもまた混み合っていた。

 香水を買う春日の横で、透子は物珍しそうに辺りを見回していた。

 その様子を見ながら春日は、香水つけないっていうのは、本当なんだな、と思った。

 透子と居ると、ほんのりいい香りがするが、あれはきっとシャンプーか香なんだろうと思う。

 買い物を済ませ、透子の肩を遠慮がちに叩いた。

 すぐに小さな白い顔が振り返る。

 この間あったばかりだというのに、なんだかほっとする顔だった。

「すみません、お待たせして。
 お茶でも奢りますよ。

 何処か行きたいとこ、ありますか?」

 その言葉に、透子は嬉しそうに手を擦り合わせる。

「あ、じゃあ。
 向かいのデパートの五階に、嘘臭いくらい、いい香りのする紅茶のお店があるんですけど―

 って、春日さん、珈琲の方がいいですよね?」

 気を使ってそう言ってくれる透子に微笑み返しながら、
「いえ、僕、紅茶も好きですよ。
 その嘘臭いくらい、いい香りの紅茶、飲んでみたいです」
と言うと、透子は、ああっ、と上目遣いに見上げる。

「信じてませんね?
 ほんっとうに、いい香りなんですってばっ」

「そこ、紅茶の専門店なんですか?」
「いいえ。チョコレートの……」

 言いながら、自分でも胡散臭げだと思ったのか、そこで言葉を切り、訴えるようにこちらを見た。