冷たい舌

 



「すみません」
と春日の車の中で、透子は恥ずかしく頭を下げる。

「いや、さすが、透子さんのお母さん。楽しい人ですね」

 まあ、他に表現のしようがないだろうな―

 車は、オヤジ臭くない今どきのシルバーのベンツだった。
 少し小さめで乗りやすそうだ。

 車内には、まだ新車の匂いがしていて、透子は落ち着かなく、辺りを見回した。

 カウンタックにはない設備に興味をそそられる。

「……どうかしたんですか?」

 きょときょとする透子に、ちらと視線を走らせ、春日が問い掛ける。

「あ、いえ。その、高そうな車だなあ、と思って」

 そう言うと、春日は前を見たまま笑った。

「透子さんのカウンタックの方が高いと思いますよ。
 昨日友人に言ったら、本当に乗って歩いてる奴がいるのかって言ってました」

 ははは、と透子は苦笑いする。

 走る骨董品、だいたい、三万キロ乗ったらガタが来ると言われるカウンタックだ。

 他のカウンタックのオーナーにに聞くと、走らせるのはせいぜい、月に一度か二度だと言う。

「でも、最初見たときは、びっくりしましたよ。

 まさか、八坂に名高い龍神の巫女様が、スーパーカーで現れるとは」

 びっくりしたと言いながら、春日は嬉しそうだった。