冷たい舌

 だが、潤子はいつもの勢いで春日に向かって言った。

「春日さん。
 この子が龍神様、龍神様って言っても、気になさらないでくださいね。

 別にこの子が雨を降らせてくれるわけでも、台風を避けてくれるわけでもないし」
と薫子が聞いていたら殺されそうなことを平気で言う。

 まあ、彼女が生きていた頃から、ちょっと豪胆なところがあったが―

「あのね、お母さん」

「この子、ちょっと見場(みば)がいいし、お祖母(ばあ)ちゃんが力の強い霊能者だったから、氏子さんたちもみんな信じちゃって」

 しゃべるしゃべるどんどんしゃべる。

 透子は、そんな母の袖を引いたが、あっさりと振り払われた。

「ほんとに龍神様の巫女だっていうんなら、山のひとつやふたつ割ってみなさいって言うんですよ」

 引きつった笑顔で透子は問い返す。

「……割ってほしいの?」

「それくらいのことやってくれなきゃ信じられないって言ってんのよ。

 親の私が見ても、あんたはちょっと勘が鋭いだけの、唯の子供ですよ」

 透子は、はあーっと重い溜息をついて、母の袖を掴んだ手に体重をかける。

「なによ?」

「いいえ、別に。
 お母さま、お忙しいんじゃないですか。

 何か他の用事をされたらどうですか?」