冷たい舌

 



 近道である林の小道を歩きながら、透子は和尚に言った。

「辛かったら、明日の朝は淵に来なくていいからね」

「馬鹿を言え、お前も呑んだんだろうが」
と言われ、

「だって、私は別に疲れてないもの」
と笑って見せる。

 道を覆う梢の隙間から月の光が和尚の髪を照らしていた。

 くすり、と笑った透子に、なんだよ、と和尚が不審げに問う。

「いや、和尚が普通の服着てるの、久しぶりに見たと思ってさ。

 なんだか普通に格好いいよ。
 忠尚みたい」

「なんだそりゃ……」

 あはは、と笑う透子は後ろ手を組んで、ゆっくりと彼の横を歩く。

「私は法衣姿の和尚の方が好きだけどね。
 でも、どっちかと言えば―」

 どっちかと言えば? と振り返る和尚に、なんでもない、と言って、透子は前を向いた。