冷たい舌

  


 ぐったりとした和尚が通りの向こうに見えた。

 その後ろで、女の子たちとまだ何処かに行こうと算段していたらしい斉上が、こちらに気づいて、和尚に何か言う。

 顔を上げた和尚は一瞬驚いた顔したが、すぐに仏頂面になる。

「なにやってんだよ、お前ら……」

 近づくとすぐに罵りの声を上げる和尚に、いやいや、と忠尚はポケットに手を突っ込んだまま笑う。

「俺たちも飲みに来てたんだ。
 お前が帰るんならちょうどいい、一緒のタクシーで帰ろうかと思って」

 和尚は、ふん、と鼻で笑う。

「嘘つけ。
 俺がどうしてるか、面白がって見に来た癖に」

「あ、ばれた?」

 笑っている透子に、和尚の視線が当たったが、すぐに彼は目をそらし、息を吐いてから言った。

「忠尚、タクシー止めろ。
 俺は、なんかあの鬱陶しい匂いに酔った」

 忠尚の肩に縋るように顔を寄せる和尚に、透子たちは笑う。

「はいはい、お疲れでしょう、八坂の大僧正。
 すぐに、この汚れた街から連れ出して差し上げますからね」

 懲りない忠尚の軽口に、和尚は忠尚の靴を蹴ったが、いつもほどのパワーはなかった。