冷たい舌

「ほら、早くしねえと、コンパ終わる時間だぞ。
 あいつが二次会に行くとは思えねえからな」

 行こうとする忠尚の腕を掴み、透子は言った。

「あのさ、忠尚。
 私、お金下ろせば本当はあるんだから、気にしなくていいのよ」

 流行のものや、最新機器に弱い忠尚に、そんな余裕があるとは思えなかった。

 忠尚はその言葉に足を止め、透子を振り返る。

「透子。
 それは、下ろしたくない金だろうが」

 何もかも知っている幼馴染みの言葉だった。

 忠尚は透子が口を開く前に、ぽん、と頭を叩く。

「まあ、そのうち、俺がなんかですったり、女に金とられたりしたら、貸してくれ。
 お前は、なんちゃって大富豪だからな」

「忠尚……」

 忠尚らしい軽口に、彼らしい思いやりを感じて、透子は払いを済ませて先を行こうとする忠尚の腕を掴んで言った。

「あのね、忠尚。
 私、忠尚のこと大好きよ」

 忠尚は一瞬、目を見開いたが、顔を歪めるようにして笑う。

「……知ってるよ」

 店の扉が開いて、また、男女の一団が雪崩込んできた。

 一段と騒がしくなった店内に、忠尚は苦笑いしながら、透子の背を軽く押した。