冷たい舌

 でも、この八坂にも、そういい女がいるとも思わないけどね、と思う透子を、忠尚は不可思議な笑みを浮かべて見つめていたが、残った酒を一気にあおると、さて、帰るか、と伝票を持って立ち上がった。

「あ、幾ら?
 此処で割って行こうよ」
と伝票に手を伸ばしたが、忠尚はその手を払う。

「いいよ。
 お前、神社の手伝いしてても、お小遣いくらいしかもらってないんだろ?

 俺たちは一応、ちゃんと坊主やってるからな」

「でも……」

 それは、まだ大学に通わせてもらってるから仕方ないことだし、だからって、忠尚に奢ってもらう理由にはならない。

 だが、忠尚はブランドものの財布を透子の頬に当てて笑った。

「ま、そのうち、お前が何かで一発当てたら奢ってくれ」

「なにかって、なに?」
と見上げると、忠尚は笑いながら、さっきの時計を見た。

「例えば、龍神の助言で、金山を掘り当てるとか」

 いまどき、金山? と顔をしかめる透子を忠尚は急かす。