冷たい舌

「ほんと偉いよ、お前は。
 いまどき惚れた男にだって、そんな尽くさないって」

「惚れてるのかもよ?」

 そう横目に見て、意味深に笑ってやると、忠尚は動揺したように問うた。

「だ……誰に?」

「龍神様に―」

 ふふふ、と笑う透子に、
「はは……」
と釣られて笑いながらも、忠尚の目は、まさかマジじゃねえだろうな、と訴えていた。

 普段の透子の態度を見ていると、そんな言葉も当てはまりかねないからだ。

 九時か、一次会が終わる時間だな。

 店の時計を見ながら思った。

 店の雰囲気にあった青い丸い壁掛けで、小さなピエロの絵が並んでいる。

 俺さ、という忠尚の声がして振り向いた。

「ほんとは、斉上さんとこ行ったとき、東京の大学も、ちょっと覗いてきたんだ。
 でも―」

「でも?」

 忠尚はいつの間に頼んだのか、運ばれてきた新しいグラスを見ながら、笑っていた。

「思ったほど、いい女がいなかったからな」
「あ……そ」

 これ以上ないくらい忠尚らしい意見だった。